エクステリアの基礎知識

誰もが良く知り、かつ日本の固有種(あるいは固有種に近い)樹木を紹介中です。スギに続いてはカツラを取り上げます。カツラ(桂)は、ユキノシタ目、カツラ科、カツラ属、の落葉高木です。この分類を見ても分かるとおり、何とユキノシタの遠い遠い親戚です。葉の形が丸いのはその名残でしょうか? 分布は、日本全域と朝鮮半島、中国の一部。従って純粋な意味での日本の固有種ではありませんが、それに近い樹木と言って差し支えないでしょう。また、ほぼ日本全域に分布していると言っても、冷涼な環境を好み、関東以東(北)が主な自生地で、東北や長野のイメージが特に強い樹木でもあります。

また、カツラは大木となることでも有名です。このため、クスノキ、ケヤキ、スギ、など共に、各地に有名な巨木があります。その中で、日本最大と言われているのが、山形県最上郡最上町権現山にある「権現山の大カツラ」(写真参照)。推定樹齢は600年で、幹周り20m×樹高38mと言う文字通りの巨木。それだけではなく、冷涼で人里から遠く離れた急斜面に自生しており、カツラが最も好む生育環境を明確に伝えてくれます。

公園・街路樹、庭木としてもカツラは高い人気を誇っています。その最大の理由は樹形の美しさにあると思います。実は筆者が最も好きな樹木でもあり、環境さえ合えばシンボルツリーとして良く勧めます。繊細な姿はまさにNO1、そう考えるからです。でもその美しさには生まれ育った環境に適応した秘密が隠されています。

カツラの美しさの秘密は、「権現山の大カツラ」の生育環境が明かしてくれます。カツラは、冷涼な気候、急峻な谷間などを特に好みます。逆に言えば、より効率よく日光を吸収する必要があると言うこと。結果、細く繊細な枝を均等に伸ばし、かつ葉も均等に着けるようになりました。だからこそ、巨木に育つ樹木でありながらも、枝が細く女性的で繊細な樹形となったと言う次第。また、葉は春葉、夏葉と変わり、特に春葉は細かく樹形の繊細さを引き立ててくれます。

なお、庭木として使う場合い、カツラは大きくなりすぎるのでは、こんな質問も良く受けます。確かに、冷涼な環境では成長が早く、長い年月の間には巨木にもなります。ただ、カツラにとっては迷惑かもしれませんが、関東以西のエリアでは気温・湿度が高く、生育に良い環境とは言えません。このため、このエリアの庭木・カツラは決して成長は速くありません。ただし、水切れ、夏の葉焼けなどの心配が多少あります。カツラは、その字を(桂)を見れば分かるとおり、日本人の暮らしに深く入り込んだ樹木でもあります。

カツラは日本、特に東(北)日本を代表する落葉樹です。大木になるにもかかわらず繊細な樹形、木材としての魅力、歴史的なかかわり、などによるものでしょうか?樹形の秘密については既に述べましたので、続いて木材カツラの特性・用途等について説明しておきます。カツラ材の魅力は、香りが良い、耐久性がある、木肌が美しい、など。従って過去には建築材としても多用されました。しかし、殆どが天然材で、供給量が激減しています。従って、現在では工芸品、銘木製品などに使用される程度。特に、高級な将棋盤・碁盤用材として有名です。

また、カツラ材が多く使われている建築物としては、長野県の善光寺が特に有名です。そのような関係からか、善光寺はカツラと言う樹木を特に大切にしています。従って、境内には無数のカツラの木が植えられています。また、そればかりではなく、善光寺の長い長い参道に街路樹として植えられているのもカツラです。ご存知でしたか。もし訪問の機会があれば直接確かめてみてください。

その一方で、名称に関して誤解されていることも・・・ 日本には桂と言う固有名詞が多数使われています。特に有名なのが、京都の桂離宮、高知県の桂浜など。これらの原点となっているのが月との関連性です。ご多分にもれず、桂離宮、桂浜とも、月のイメージから桂の文字が当てられています。その理由は、中国では月の中に理想・幻想の世界がある。桂はそこに存在する木とされていたからです。月へ戻ったかぐや姫とその優雅な宮殿生活。その側には桂の木。そんなイメージでしょうか。

ところが、ここに大きな問題があります。中国で桂と言えば、日本のカツラではなく、キンモクセイかその仲間の樹木であるからです。でも、桂離宮や桂浜の名前をつけたのは日本人。その人達は、中国人と同じようにキンモクセイをイメージして命名したのでしょうか。それとも、意味の相違に気づかず、あるいは日本風に解釈しなおし、カツラをイメージして命名したのでしょうか。

いずれにしても、外見の美しさだけではなく、カツラには日本人の心を動かす何かがあります。最近は、シンボルツリーなどに使われる頻度が少し減っているようにも感じますが、庭に1本植え、ロマンを語りかけて見てはいかがでしょうか・・・

樹形の美しいカツラの木。シンボルツリーにもオススメです。

2022/09/30
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