エクステリアの基礎知識

エクステリア用木材「アイアンウッド(ハードウッド)」についてお話しします。
世の中には、変わった物もあるもので、まさに鉄のように重くて硬い木のことです。ではどれほど硬くて重いのでしょうか。

まず重さですが、比重1前後、つまり水に浮くか沈むかの瀬戸際と言ったところ。鉄のように完全に沈むわけではありませんが、この段階ですでに「木の常識」を逸脱しています。一般の杉材などと比較すると、約2倍の重さと言うことになります。

次に硬さですが、例えばビスや釘を打つとき、一般の木材ならカナズチで簡単に打てますが「アイアンウッド」の場合は、あらかじめ下穴をあけておかないと、打ち込むことが出来ません。

ここで「アイアンウッド」の定義を確認しておきます。
A:比重が1前後ある。
B:屋外の一般的な使い方で、ノーメンテナンスで20年以上の耐久性(腐ったりしない)を持つ。
以上です。

従って、ジャラ、ケンパス、と言ったかなり硬くて、腐りにくい木材も輸入されていますが、比重が0.8前後しかないため、これらは「アイアンウッド」には含めません。しいて呼ぶなら「準アイアンウッド」とでも言うべきでしょうか。

ではなぜ、このような不思議な木が生まれ、どのような種類があるのでしょうか・・・。
物によっては水に沈むこともあり、20年以上も腐らない不思議な木材「アイアンウッド」が何故出来るのでしょうか?
答えは、熱帯雨林だけが生み出せる神秘によるものです。つまり、熱帯には四季がありません。四季が無いと言うことは木に「年輪」が出来ない。年輪が出来なければ、硬い部分と柔らかい部分の区別が無くなります。
となれば、成長が早く柔らかな材質の木は、ラワン材のように全体が均一に柔らかくなります。逆に、広葉樹で成長が遅い木は全体が均一に硬くなり「アイアンウッド」に成ると言う次第です。

元々、「広葉樹」は材質が硬いものが多く、その遺伝子を強く持つ木が熱帯雨林で進化し始めて「アイアンウッド」と成ることが出来ました。「レッドウッド」が生命の畏敬を感じさせる「神ノ木」なら、「アイアンウッド」は熱帯の気候と自然だけが生み出せた「神秘の木」と言えるかも知れません。

見方を変えれば、自然だけが生み出せる木で、少なくとも現在では栽培し育てることは出来ません。したがって、私たちはその自然に感謝し、出来るだけ壊すことの無いよう、細心の注意を払いながら、この「アイアンウッド」の恩恵にあずかりたいものです。

しかし、残念ながら、既に一部で自然破壊が行われ、大切な「アイアンウッド」が安定供給できなくなってしまっていることも、忘れないで下さい。
「アイアンウッド」にはどのような木があり、それぞれの特色は?
まず、日本に入って来ている主なものを列記しておきましょう。
A:ウリン
B:イペ
C:マサランドゥーバ(アマゾンジャラ、パシフィックジャラ)
D:セランガンバツ(バラウ、バンギライ)

と言ったところでしょう。そして、重さ・耐久性についてはほぼ共通しているものの、天然木ですから、それぞれの事情と特色を持っています。



本日は、「A:ウリン」について述べます。
「ウリン」は「アイアンウッド(鉄木)」という呼び方を用いた最初の木と言って良いのではないでしょうか。それまでは「ハードウッド」と言う名称が一般的であったからです。

産地は「インドネシア」で「クスノキ科」に属します。「楠木」は神社などに聳え立つ大木で、ご存知の方も多いでしょう。そして、防虫剤として知られる「しょうのう」の原料としても・・・。
その影響か「ウリン」も樹脂に「タンニン(ポリフェノール)」を多く含み、そのうえ「アイアンウッド」の重さ・密度を具えているため、まさに耐久性抜群の木として知られています。
そり、ひねり、も比較的少なく、「アイアンウッド」の中でも最も評価の高い木材の一つです。

欠陥は、「タンニン」が強いため、濡れると茶色の樹脂が流れ出し、周辺を汚すことがあるということです。この点注意して使う必要があります。万一、樹脂が流れ出した場合は、台所洗剤の「キッチンハイター」で拭いて下さい。吸水性の強い素材で無い限り落ちます。
また、原木が比較的小さいため、4mと言った長尺物、90㎝角と言った太いものにこだわらず、小さめの材料を有効活用することも大切です

この他、中国がマンションの床材として大量輸入するようになったこと、日本での評価が高まり輸入元が増加したこと、もともとの産出量が少なめであること・・・などから、資源不足が深刻になりつつあります。もっと自然を大切にする気持ちを持ち、資源保護に協力しながら使用することが大切です。

イペ」は、ブラジル、ペルーなど、南米に自生する「ノーゼンカズラ科」の大木です。

特色として、下記のような項目を上げることができるでしょう。
A:アイアンウッドの中では比較的色が黄色っぽく薄い。
B:うっすらと木目を表すことがある。
C:そり、ひねり、が少ない。
D:圧縮強度、耐久性に非常に優れている。
E:原木が大きいため、長い材、太い材、など大き目の部材が確保しやすい。
F:安定供給が少しずつ困難になってきており、価格が高い。
G:「アレルゲン」を持ち、木粉に触れるとかぶれることがある。
以上です。

結論から言うと、「アイアンウッド」の中でも人気が高く、物性にも優れていると言うことです。
「イペ」は、日本に入ってきた時期も古く、かなり前から注目の木材となっていました。しかし、その分、多く伐採され確保が難しくなってきていることをお忘れなく。結果、「アイアンウッド」中、最も高い木材(高級?)になっています。

また、G:で指摘したよう「アレルゲン」を持っています。木材に触れても殆ど問題はありませんが、加工中に木粉が付くと、かぶれることがあります。アレルギー体質の方、お子様などは施工現場に近づかない方が良いでしょう。

アイアンウッド・マサランドゥーバ」と言っても「マサランドゥーバ」などと言う名前は、輸入元のスタッフでもない限り、プロでも殆ど聞いたことがないでしょう。
輸入元の数が比較的少ない上、殆どが馴染みの薄いこの名称を使っていないからです。そこで、「アマゾンジャラ」「パシフィックジャラ」と言えば、それなら知っていると答える人もかなりいるでしょう。
ただし、この名称は現地では使われていません。言うまでも無く、日本で考えられた通称です・・・。

この木は、南米のブラジル、ペルーが原産国です。従って「イペ」とほぼ同じ地域から輸入されているわけです。現地では、既に紹介した「マサランドゥーバ」または「マルニカラ」と呼ばれています。いずれにしろあまり覚えやすい名前ではないので、比較的なじみの深いオーストラリアの「ジャラ材(ユーカリ)」を参考に、「アマゾンジャラ」「パシフィックジャラ」と言う、いわばブランド名を付けたのでしょう。

「マサランドゥーバ」は「アカテツ科」に属する、大木です。
特色としては、以下のような点を上げることが出来るでしょう。
A:比重が極めて重く、強度、耐久性に非常に優れている。
B:原木が大きく、太い材、長い材、など大型の材料が入手しやすい。
C:現状では、比較的安定供給しやすい「アイアンウッド」の一つ。
D:濃いブラウン色をしているが、「ウリン」ほど樹脂が流れ出さず、廻りをあまり汚さない。
E:そり、ひなり、がやや大きい。
以上です。

つまり、高耐久性・強度、安定供給可能など優れた面が多いが、そり、ひねり、が少し大きいことを前提に使う必要がある「アイアンウッド」と表現して良いでしょう。

セランガンバツ」は、エクステリアのルートでは、比較的販売量が少ないのですが、古くから木材商社が輸入しており、「アイアンウッド」系の木材としては、一番流通量が最も多いと考えられます。つまり、屋外以外にもかなり多く使われていると言うことです。

「セランガンバツ」は「フタバガキ科」の木で、マレーシア、フィリピン、インドネシア、など比較的広範囲に自生し、その分確保も比較的容易です。価格も「アイアンウッド」系では少し安くなっています。
南洋材として有名な「メランティ」の亜種ですが、「セランガンバツ」のほうが重くて硬いのが特色。名称としては、「バラウ」「パンギライ」と呼ばれることもあります。

ただ、この木を「アイアンウッド」に入れるか否かは非常に微妙です。以下の特性を確認し、判定は貴方にお任せします。
A:比重が0.9強(本来のアイアンウッドは1.0前後)で、少し耐久性に難が有る。
B:色は比較的黄色っぽく、その分樹脂が少なくあまり廻りを汚さない。
C:少し木目が粗く、そり、ひねり、もかなり大きい。
D:供給は比較的安定しており、価格は少し安い。
以上です。

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