近年大人気のシンボルツリーシマトネリコ。ところでシマトネリコっていったい何者????
シマトネリコをまず紹介するのは、人気NO1シンボルツリーであるため。その理由は、常緑樹(本当は半常緑樹)で冬も楽しめる、樹形が女性的でスッキリしている、日向~半日陰まで対応でき育てやすい、安価である・・・など。でも、シマトネリコの正体とは一体なんでしょうか? 年配者なら、トネリコの木をご存知の方も多いと思いますが、それとどこが違うのでしょうか?
実は、シマトネリコは沖縄・アジアから導入されたトネリコの近樹種です。分類的には、ゴマクサ目、モクセイ科、トネリコ属、シマトネリコとなります。学名は「frax1nus(トネリコ属のこと) griffithii」。常緑高木で、原産地はインド以東のアジア~北限が沖縄。名前から類推すると、当初日本へ持ち込まれた大半のシマトネリコは沖縄の物であったと考えられます。今人気のシマラッキョウなどでも分かるとおり、沖縄や奄美群島から導入された産物の多くがシマ(島)***と表現されるからです。
従って、現在ではシマトネリコと言う名前が定着していますが、タイワンシオジと言う別名もあります。むしろ、このタイワンシオジと言う名前の方が元々は通りが良かったのかもしれません。また、日本では庭木用として使われているため、大木を目にすることは殆どありませんが、本来は樹高15m以上にもなり、原産地では建築用材としても使用されています。
シマトネリコの樹木としての特性を上げると、雌雄異株である、葉は細長く光沢があり比較的柔らかい、5~6月に白い花を群開させる、実(種)はサヤに入っており少しマメに似ている、若い枝は細くしなやか、病害虫に強い、などを上げることができます。また、熱帯・亜熱帯産の樹木で、本来は寒さに弱かったと考えられますが、日本で定着してかなりの時間が経過しており、長野県等でも育つようになっています。ただし、寒冷地では冬は落葉するため半落葉樹と言う表現が良く使われます。
では、シマトネリコとトネリコはどの点が異なるのでしょうか。また、トネリコ属とは一体どのような樹木グループなのでしょうか。シンボルツリー・シマトネリコとはあまり関係が有りませんが、探っていくと興味深い事実もいくつか見えてきます。
元々日本人がトネリコと呼んでいる樹木は落葉樹。しかも日本原産の固有種です。分類的には、ゴマノハグサ目、モクセイ科、トネリコ属、トネリコとなり、前出のシマトネリコの近樹種ですが、若干の違いがあります。学名は「Fraximus(トネリコ属) japonica」。そうこの「japonica」に注目する必要があります。日本語風に言えば「日本トネリコ」となるでしょうか。だからこそ、私たちは古くから親しんできたトネリコももっと大切にするべきでしょう。
では、なぜトネリコなのでしょうか? 諸説ありますが、昔は樹木に付着する虫が出すイボタロウを戸などに塗り、滑りやすくするために使いました。そしてトネリコはイボタロウを採集するのに都合の良い木でした。ここから、トニヌル木・・・トネリコと呼ばれるようになったと言うのが最有力。樹木としての特色は、落葉・常緑(半常緑)と言う意外は、シマトネリコと良く似ています。ただ、自生木だけではなく、住居・集落周辺にも植えられたため、昔はシマトネリコでは殆ど見かけない、大木に良く出会うことが出来ました。また、木材としても有効活用してきました。なお国内では、トネリコの仲間としては、アオダモ、シオジ、などがあります。
では、トネリコの仲間とは? いわゆるトネリコ属の樹木と考えて良いでしょう。同属の樹木は45~65種程度と言われています。全て高木であり、しかも落葉樹が大半を占めています。つまり、温帯地方に栄えた樹木だが、一部(4~5種)が熱帯・亜熱帯に進出し常緑化したと考えるべきでしょう。勿論、シマトネリコも熱帯進出組みの1種と言うこと。
他のトネリコ属では、アメリカ大陸へ進出したアメリカトネリコ(ホワイトアッシュ)、ヨーロッパへ進出したセイヨウトネリコなどが特に有名で、日本と同じように身近な大木として親しまれています。従って、トネリコ属の樹木の多くは、温帯地方中心に広く分布したと言うだけではなく、絶えず人間の身近にあり、大きく育ったものは街のシンボルとして大切にされたと言う共通点を持っています。トネリコ属の最も特色ある共通項としては、花弁が4~5裂で基部が繋がり小さな花を群開させる、サヤのある実(翼果)をつける、と言う点を上げることが出来ます。そんな、花・実をみかけたら、ひょっとするとトネリコの仲間ではないか・・・と思い出してみてください。
シンボルツリーのシマトネリコを採用した事例。
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