この項からはモチノキとその仲間を取り上げます。先ず紹介するのはモチノキとクロガネモチ。ただ、残念なことに最近は住宅用の庭木として使われる頻度が低下しています。樹形が重い、そんな固定観念があるからでしょうか。でも、モチノキとクロガネモチは多くの魅力を持っています。この機会に、ぜひ見直して下さい。
モチノキは日本では本州、四国、九州、南西諸島、それに台湾、中国中・南部に自生する常緑高木です。分類的には、モチノキ科、モチノキ属、モチノキ(種)となります。一方、クロガネモチの自生地もほぼ同じ。ただ、台湾~東南アジアへと若干こちらの方が広く分布しているようです。分類的には、モチノキ科、モチノキ属、クロガネモチ(種)となり、極めて近い樹種であることが分かります。
両者共に、楕円形で光沢のある葉、重厚な樹形、秋~冬に赤い実を着け美しい、樹皮のキメが細かい、など多くの共通点を持っています。従って、一般の方が見分けるのは難しいかもしれません。ただ、クロガネモチは樹高が10m程度でやや小型、両者共5~6月に小さな花を群開するがモチノキは淡黄色でクロガネモチは淡紫色、クロガネモチの葉は波打つことが良くある・・・などの相違があります。近くにモチノキ、クロガネモチと思われる木があれば、上記を参考に見分けにチャレンジしてみてください。
なお、モチと言う名が付いているのは、樹皮から餅のような粘着剤が採取できるため。昔はこれをトリモチにして、鳥や昆虫を捕まえました。同系の粘着剤はヤマグルマと言う植物からも採れましたが、モチノキは白、ヤマグルマは紅色で、白い方をホンモチと言い、上位にランクしていたようです。なお、モチノキ、クロガネモチを庭木に使う場合は、後者の人気が上回っていました。それは、大きくなりすぎないという長所に加え、クロガネモチと言う名前の中に「金持ち」と言う言葉が含まれているため。ここから派生し、コガネモチになれる木と言ったキャッチフレーズがPRに使われることもあります。そんな縁起木というだけではなく、両者とも、常緑である、若葉が美しい、赤い実を秋~春まで楽しめる、などシンボルツリーとしても多くの魅力を持っています。確かに、繊細な株立と言ったタイプでは有りませんが、どっしりとした樹形には別のチャームポイントも・・・
なお、モチと名の付く身近な樹木に、ネズミモチ、カナメモチなどがありますが、ネズミモチはモクセイ科、カナメモチはバラ科の樹木で、まったく別系統です。葉の感じがモチノキに近いためこのような名前が付いたと考えられますが、お間違いの無いように。
モチノキは日本では本州、四国、九州、南西諸島、それに台湾、中国中・南部に自生する常緑高木
クロガネモチと言う名前の中に「お金持ち」と言う言葉が含まれています。