この項では、ハナミズキの兄弟分であり、最も人気の高いシンボルツリーでもあるヤマボウシを取り上げます。
ヤマボウシは、ミズキ目、ミズキ科、ヤマボウシ亜属、ヤマボウシ(種)、と言う分類の落葉小高木です。これを見ても分かるとおり、アメリカ出身のハナミズキとは、故郷はまったく異なるものの、極めて近い親戚に当たります。自生地は本州~九州、朝鮮半島~中国の一部。ただ、ヤマボウシの学名は「Benthamidia(ヤマボウシ亜属) japonika」で、ハナミズキの「Benthamidia florida」と比較すると興味深いものがあります。ヤマボウシは日本代表であり、ハナミズキはフロリダ代表、そんな印象の強い学名であるからです。
両者は近い親戚であるだけに、樹木としての学術的特性も非常によく似ています。特に花(正確には花とその周辺の構造)に大きな特色があります。両者ともあでやかな花を咲かせる。ただし、それは花ではなく総苞という花の基部の葉である。そして、本当の花は総苞に包まれた中心部にあり小さくて目立たない、と言った形状であるからです。勿論、これがヤマボウシ亜属の共通の特色でもあります。
ただ、ヤマボウシは葉が出揃った後に花(総苞)が咲く(ハナミズキは花が先)、花期が5月後半~6月初旬でハナミズキより2週間~1ヶ月遅い、花は大半が白(最近はピンク系、クリーム系も)でやや地味だが清楚、と言った違いがあります。従って、花を見ればハナミズキ・ヤマボウシの区別は簡単につきます。
また、時期を限定すれば、両者の間にはより大きな相違が現れます。それは、果実(実)です。両者とも秋に赤い小さな実を着けますが、ハナミズキは表面がツルリとしており、食用にはなりません。しかし、ヤマボウシの実には少し凹凸があり食べられます。そう、ヤマボウシは和製のベリーでもあるわけです。その他にも、ある程度成長すれば、樹皮の割れ方が異なるなどの相異はありますが、花・実期を除けば、両者の区別は容易ではありません。
また、人気の樹木だけに、ハナミズキとヤマボウシの交配種、実の大きな改良種(ビッグアップル)、赤系の花を着ける品種(源平、サトミ)、クリーム系の花を着ける品種(金陽)、など多くの改良種も出回るようになりました。楽しみが増えた反面、ヤマボウシ本来の魅力が薄れつつあるようにも感じます。もっと「B.japonica」の名を大切にするべきではないでしょうか。
「ヤマボウシ亜属の日本代表ヤマボウシ! japonicaの名をもっと大切に!」
ヤマボウシの施工例はこちら。