花の美しい樹木を紹介中です。この項からは夏に楽しめる落葉樹を紹介します。まずはサルスベリ。サルスベリは2つの顔を持つ樹木と言えるでしょう。1つ目は、その名の由来(猿すべり)となるスベスベの木肌。もう1つは夏中咲き続ける(百日紅)あでやかな花です。特に最近は、シンボルツリーや雑木として使われることが多く、後者にスポットがあたることが増えています。
サルスベリは、フトモモ目、ミソハギ科、サルスベリ属、サルスベリ(種)と言う分類の落葉高木です。学名は「Lagerstroemia(サルスベリ属) indica」。ここで最も注目すべきは、落葉樹であるということ。分類表示については、あえてフトモモ目と言う大項目から表記しました。理由は仲間の樹木は熱帯・亜熱帯中心に分布するものが多いことを分かっていただきたかったからです。事実、サルスベリの原産地は中国南部で亜熱帯またはそれに近いエリアです。
日本人の感覚では、落葉樹と言えば冷涼なイメージを持ちます。でも、サルスベリは分類関係、原産地、日本での生育状況、どの点を見ても暑さに強い樹木であることは間違いありません。従って、冬に葉を落とすことでは他の落葉樹と同じですが、元々の落葉メカニズムは別であるような気がします。例えば、雨季・乾季に関係するとか? そう言えば、熱帯の絶滅危惧樹木で高級木材の代表でもあるチークも落葉樹であることを思い出します。暑い地域には別の意味の落葉形態が存在していても不思議ではありません。
いずれにしても、サルスベリは特有の木肌、夏の花の美しさ、酷暑に耐えられる樹木、と言った特性を備える魅力的な庭木であることは間違いありません。また、近年は多くの園芸種も登場し、花の色も白、ピンク系、赤に近いもの、さらには混色までバラエティーに富み、益々魅力・人気共にアップしています。地球温暖化による酷暑は困りますが、それに対抗できる樹木ともいえるでしょう。
栽培面でも剛健であまり気を使う必要もありません。ただ、枝が伸びすぎ樹形が乱れやすいので、その時は思い切った剪定を行ってください。また、サルスベリと言う名称は百日紅だけではなく、樹皮が剥がれ木肌がスベスベになる樹木の総称としても使います。例えば、身近な庭木の中では、シャラ、ヒメシャラなどもサルスベリと(最近は極めて少なくなったが)通称することがあります。酷暑の季節、貴重であでやかなサルスベリの花をぜひ楽しんでください。できれば、非常に変わり者の落葉樹であることも思い出しながら。