日陰でも育つガーデン用低木の代表種を紹介します。ただその前に、日陰に強い樹木と照葉樹林との間に、深い関係があることを確認しておきます。その秘密を知っていれば、どの樹木が日陰に強いかを知らなくても、その木を見るだけである程度判断できるからです。
では、照葉樹林とは何でしょうか? 答えは「温帯地域に広がる常緑広葉樹主体の樹林の一種」と言うことになります。実は、温帯域の常緑樹主体の樹林は2種あり、もう1種は葉の硬いコルクガシ、オリーブ、アーモンド、ピスタチオ、イチジク、などが代表的構成樹木となる硬葉樹林(現在は極めて少ない)です。ではなぜ、照葉樹林と言う名前が付いたのでしょうか。答えは、この樹林は葉に光沢がある常緑樹が主体となっているからです(光沢がある葉のことを「照葉」と表現)。
そして、照葉樹林の特色に1つ重要なポイントがあります。それは、基本構成樹の大半が陰樹(日陰でも育つ樹木)であるということ。その理由は、うっそうとした森を構成し、日陰でも発芽し育つ樹木でないと存続できないからです。特に、照葉樹林の低木は日陰に強くないと、種を維持することができません。ここから、「日陰に強い樹木≒葉に光沢がある(多くはある程度の肉厚がある)」と言う公式が成り立ちます。覚えておいてください。
日陰に強い低木の紹介と言う本題に戻します。まず紹介するのはカクレミノ(隠蓑)。ウコギ科、カクレミノ属、カクレミノ(種)と言う分類の常緑高木です。学名は「Dendropanax(カクレミノ属) trifidus」で自生地は東北以西(南)の日本全域。つまり、典型的な照葉樹林の樹木と言うこと。当然日陰にも強いということになります。
ただし、提示のとおり低木ではなく高木です。従って、街路などではかなり大きなカクレミノが植えられていることも珍しくありません。しかし、住宅のガーデンでは、主木として使われる頻度は少なく、むしろ日陰用の副木・低木として植えられることの方が多くなります(ただし、ある程度の成長を見越したポイント用の樹木として植えることが多い)。
カクレミノの最大の特色はその葉にあります。単に葉に光沢があるというだけではなく、幼苗の場合は切れ込みあるが、成長するとそれがなくなり楕円形の葉となるからです。従って、カクレミノの葉と言うと、少しカエデなどに似ていると思っている人も多いと思いますが、それは小さな木の葉をよく目にするからです。このため、成長した街路樹等のカクレミノを見ても気が付かない人もいます。