エクステリアの基礎知識

日本の固有種、あるいはそれに近い代表的な樹木を紹介中です。前項ではカツラを取り上げましたが、となればどうしても次に登場してもらわないと困る樹木があります。それがケヤキです。なぜなら、カツラが比較的冷涼地域、つまり東(北)日本を代表する落葉樹であるなら、ケヤキは比較的温暖な地域、つまり西(南)日本を代表する落葉樹であるからです。

ケヤキ(欅)は、ニレ科、ケヤキ属の落葉高木です。分布地は、東アジアの一部と日本。従って、我が国の純粋な固有種ではありませんが、圧倒的に日本人とのかかわりが強く、固有に近い存在と言っても過言ではありません。この点もカツラと似ています。日本では、北海道を除く全域に自生しています。ただし、比較的暖地を好み、西(南)日本のイメージが強い樹木で、東北地方の場合は平地にのみに自生しています。

ケヤキは樹形が美しいことでも定評があります。イチョウの葉を立てたように扇状に枝を広げる、葉が細かく繊細な印象、などが美しさの要因ですが、あらゆる所に植えられているので、詳しい記述は差し控えます。最大の特色は、長寿で巨木になること。このため、日本全国に有名木があり、東根の大ケヤキ(山形県東根市、推定樹齢1,500年)は特別天然記念物に指定されています。また、北は山形県~南は宮崎県まで15前後の天然記念物指定木があります。

ただし、奇妙な誤解も。競馬ファンならご存知でしょうが、東京競馬場の大ケヤキ(?)にちなみ「欅ステークス」と言うレースがありますが、この木は実はケヤキではなくエノキ(榎)の間違いだとか。「榎ステークス」に変名しないと、同競馬場の巨木が可愛そうな気もします。また、ケヤキはツキ(槻)とも呼ばれ、古くから同名でも親しまれていました。例えば、大阪府内に高槻市と言う街がありますが、文字通り背の高いケヤキがあったためこの名前が付いた(異説もある)とも言われています。

ただ、ケヤキは街路樹・公園木としては多用されても、庭木としてはあまり使われません。理由は、樹勢が良すぎるため。ケヤキは成長が早いばかりではなく、根張りが極めてよい樹木でもあります。このため、住宅の敷地内に植えると、地中の配管等を壊してしまうことも珍しくないからです。また、ケヤキは古来から木材としても珍重されてきました。しかし、伐採された後も樹勢の良さを象徴するようなエピソードが多数伝えられています。

ケヤキは比較的人里近く、つまり平地に近い所に多く自生していますが、カツラは急峻な谷間などに多く自生しているからです。前者は比較的暖地、後者は冷涼な環境を好むからでしょうか?

このため、ケヤキは天然記念物に指定されるなど、有名な巨木が全国にありますが、殆どが人間の住むエリア(人が植えたものも多い)に存在します。では、日本最大のケヤキとは。特定は難しいのですが、東根の大ケヤキ(山形県東根市)とするのが最有力。同木は1340~50年ごろ小田島長義の築いた東根城内に移植されたものといわれています。高さ28m×根回り24m、樹齢1,500年以上と推定されており、国指定の特別天然記念物でもあります。

ケヤキは人の暮らしとのかかわりが深い樹木で、木材としても珍重されてきました。硬質で耐久力がある、木肌が美しい、特有の光沢があり年月と共に魅力が増す・・・などの特性を持つからです。その一方で、国内材最大の難物とも言われています。完全乾燥するまで、あばれまわるという性質を持っているからです。従って、伐採から木材として使用できるまで、10年以上の自然乾燥期間が必要とも言われています。

昔は、民家の大黒柱、梁などにもケヤキ材が良く使われました。そのとき、乾燥が甘かったのか、家の屋根ごと持ち上げ困ったなどと言うエピソードも伝えられています。棟梁がケヤキ材の知識が無かったなどとは考えにくく、実際にそのような失敗があったとは考えにくいのですが、ケヤキの特性を伝えたエピソードとしては興味深いものがあります。

しかし、ご多分にもれずケヤキ材の供給量は激減しています。従って、建築材として使われることは極めて稀となりました。現在では、銘木製品、高級家具材、などとしての活躍が主力となっていますが、その美しさ、品質には出色したものがあります。材を大切にしながらも、新しい用途を見つけていくことも忘れてはなりません。

公園、街路、ビルの庭園部、などでケヤキが植えられる頻度は益々多くなっています。従って、日本人であればケヤキを目にしない人はまずいないでしょう。だからこそ、次にケヤキを見たときは、何千年にも及ぶ日本人との付き合いに、想いを馳せて見てはいかがでしょうか・・・

ケヤキは街路樹・公園木としては多用されても、庭木としてはあまり使われません。理由は、樹勢が良すぎるため。ケヤキは成長が早いばかりではなく、根張りが極めてよい樹木でもあります。このため、住宅の敷地内に植えると、地中の配管等を壊してしまうことも珍しくないからです。。。

2022/09/30
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